不可解な相良公民館の閉館
<9月21日に教育委員会が全議員に配布した文書>
あなたは須々木区にある相良公民館が、「今年度いっぱいで閉館」されるというニュースは、ご存じですか? 実は、われわれ議員は9月14日に突然…その「方向性」を聞きました。
担当部課の管理職が、各議員の自宅を訪問し「相良公民館は築42年を超え、以前から耐震性の問題を危惧されていた。今年4月の熊本地震を受けて『人命第一』という観点から、年度末までは予約に従って貸し出すが、その後は当面休館したい。今後廃止するかどうかや跡地利用については現時点では未定。これから地元自治会や関係団体にも説明し、理解を求める」と口頭で説明を受けました。
口頭でだけです。そして、その時は、まだ「当面休館」とのことでした。ただし、その日にわれわれに示された資料や文書は「まだ関係各所に説明していないので…(公にできない)」との理由で、その場でいったん回収されました。そして、21日になって上の写真の文書が、全議員の状差し(書類入れ)に配られました。
ところが、本日の議員全員協議会における「公共施設マネジメント(=再構築)基本計画」の説明の中で、当局は、来年4月以降の「使用中止」を前提にした計画の解説を始めたのです。そして、配布された不完全な資料にも、今年度末での「閉館」だけは明記されていたのです。
私は「人命重視」の観点からの当局の決断自体に異論はありません。私は以前からずっと、人命にかかわることなど市政の重大な決定は、議論と熟慮を重ねた上で、最終的には「責任者が高所大所から判断すべきだ」と思っています。しかし、たとえ市役所内では正式に閉館が決定していたとしても、議会全体に対して本日まで「公式な報告がなかった」ことが、何よりも残念です。当然、本日の全員協議会で説明があるものと思っていましたから…
「閉館」という結論に反対なのではなく、その決定までのプロセスに大きな問題があると思い、会議ではいろいろと質問と意見をさせていただきました。
そもそも、牧之原市は誕生以来のこの11年間…。官民協働のさまざまな「対話サロン」や「ワークショップ」による長期にわたる合意形成と市民主導の計画立案で「日本最先端の市民参加自治体」と高く評価されていたはずです。今年も、早稲田大学と毎日新聞社が共催する「マニフェスト大賞」の最優秀賞候補にノミネートされているそうです。
そして、そんな慎重かつ丁寧なプロセスを経て「今後20年間かけて約20%削減することを目標に取り組む」という…とても気の長いプロジェクトの「コミュニティ施設」で最大の建物の廃止が、市民や地元自治会、利用団体にも何の相談もなく、年度の途中であっさり決定してしまうようなことが…どうして許されるのでしょうか?
今回は、あくまで熊本地震が理由とされていますが…2011年の東日本大震災直後の方が、状況は深刻だったのです。だからこそ、市内の公共施設の耐震性や津波浸水域が再調査されたのですし、市民各層の代表からの幅広い意見を聞きながら、2年以上の歳月をかけて「津波防災まちづくり事業」や「公共施設マネジメント基本計画」をまとめ上げたのではなかったのでしょうか?
結局、「市民参加による理想的な長期計画」と絶賛されていても、時と場合と正当な理由によっては「朝令暮改、鶴の一声で、あっという間にひっくり返ってしまうこともあるのだ」という現実に驚きました。私は、それで良いと思いますし、そうあるべきだとも考えますが…「今の牧之原市ではできない」ことだと誤解していました。
市長は「今回の決断に関しては…これまでの経緯や耐震性の問題も含め、2期以上の議員さんにはだいたいご理解をいただいていたと思っています」と回答されました。しかし、1期生の私はそういう曖昧さやダブルスタンダードな進め方が…かなり気になります。
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<相良公民館の閉館決定までの経緯>
1974年(昭47) 結婚式場も兼ねた相良町立の公民館として開館。同町の公民館活動、生涯学習の舞台となる。
1997年(平9) 鉄筋3階建ての建物の耐震診断を実施。縦方向、横方向ともに耐震の目標値を下回る。「大地震に対して多少の被害が予想されるので、建物の重要度を考慮すれば、補強が必要と思われる」と静岡県建築事務所協会から指摘を受ける。
2001年(平13) それまであった配膳用の業務用エレベーターを改修し、総工費1420万6500円で利用者乗降用のエレベーターを新設。
2011年(平23) 東日本大震災発生を受け、公民館の「耐震補強改修計画」を作成。事前の耐震診断により、中央部3階建ての部分において静岡県の耐震促進改修計画における耐震性が最低の「ランクⅢ」(倒壊する危険性があり、大きな被害を受けることが想定される)との判定を受ける。
2014年(平26) 耐震補修工事の経費の見積りだけで約2億2000万円かかるとして、当初予算への計上が検討されるも、建物本体の耐用年数や公共施設の再配置の機運、そして財政事情から2年連続で見送られる。
2016年(平28) 4月以降、熊本地方を震央とする巨大な群発地震が発生。市役所内で「多くの市民の集まる公民館で、耐震性能の劣る施設を使用し続けてよいのか?」という議論が急速に高まる。9月に入り、田沼塾等で来年度の利用計画を検討する団体も現れてきたことを配慮。「平成28年度末をもって、相良公民館の使用を中止する」との最終的な決断が下される。
<今年度末での閉館が決まった相良公民館(10月15日撮影>