緊急事態宣言の延長で…
先日もご紹介した私の30年来の友人・Ryoji Kida氏による的確で、痛切な解説の文章です。私と多分同い年の経験豊富な地方の医師です。専門は内科です。
31年前の世界青年の船で知り合った旧友です。「国境なき医師団」でパキスタンで働いたり、東日本大震災の時は、被災地で活躍されていた尊敬するドクターです。
本人の御諒解をいただき、一部段落を入れ替える等の編集を加えました。
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安倍首相は4日、緊急事態宣言解除の延期を発表した。一部の県については規制の緩和も発表した。日本政府は、抗体検査の結果から、新型コロナウイルスの「封じ込め」は、すでに諦めている。
行動様式の変化があろうがなかろうが、6月以降自粛は段階的に解かれていく。患者は町中にあふれているが、自らが感染しない努力は「個人の自己責任」に委ねられることとなった。
あなたが陽性となり具合が悪くなった時に、入院するベッドを確保できるか? アビガンを内服できるか? もし重症化したら、人工呼吸器やECMOを利用できるか? それらはすべて、運と、コネと、お金のあるなしにかかってくることだろう。
5月2日、都内から山梨に帰省中の20代の女性がPCR検査で新型コロナウイルス感染症の陽性と診断され、その結果を知りながらバスで都内に戻っていたことが判明。大ニュースとなった。
しかし、この事件の本当のポイントは「彼女が検査結果を知っているにもかかわらず、高速バスを利用して帰京していたこと」ではない。
一番、衝撃的なことは「他の患者への聞き取りとの照会がなければ、高速バス利用の事実が発覚しなかった」ことだ。
さらに、彼女のモラル違反が「高速バスに乗っただけでなく、ゴルフ練習場への立ち入りや接骨院の利用にまで及んでいたこと」が判明したことだ。
そのことで「彼女と濃厚接触した者が多数存在し、彼らもこれまで何の制限もなく自由に活動していたこと」が判明したことだ。
そして、その判明と報道によって「彼女や彼女を庇っていた家族への、誹謗中傷の嵐が止まないこと」である。
こうしたことが、大問題なのだ。我々は、このニュースをきちんと考察し、その本当の意味を理解しなければならない。
さらに重要なことがある。今回このニュースが広く知られるようになったことで、これまでは(彼女を含め)日本中の誰もがPCR検査の実施を希望していたのだが…
これからは「症状があっても検査を希望しない」あるいは「勧められても拒否する」ようになって、それが「大きな社会問題になってくる」と予測されるということだ。
もし、この20代の女性が、味覚障害を自覚していても医療機関を受信しなかったら? あるいはPCR検査を拒否していたら? 高速バスに乗った彼女のことは決してニュースにならなかったし、ゴルフ練習場を利用しても、接骨院に行ってもその危険性について、誰も気がつくことはなかった。
もしあなたが、彼女のような立場で、仕事が休めなかったり、子どもやペットの世話があったり、介護が必要な親がいたりしたらどうだろう? このニュースを知っていても、軽度の風邪程度の症状で、はたして進んで医療機関を受診するだろうか? 受診したとしてもPCR検査を希望するだろうか? これに「はい」と即答する人は、ほとんどいないのではないだろうか?
彼女の前にも、こういう自問の末に医療機関を受診しなかったり、PCR検査を拒否した人は大勢いただろう。彼らは彼女のように気づかれることも、バッシングされることもなく普通に生活し、スーパースプレッダーとして、感染経路不明の患者の数を増やしてきたはずだ。
新型コロナウイルス感染症の無症状者、軽症者の多くは、入院ではなく宿泊施設入所でもなく自宅療養を行なっている。彼らの外出については、以前も現在も、何もトレースする方法はない。「一人暮らしなら買い物のための外出もやむを得ない」ということになっている。さあ、これで新型コロナウイルス感染症の流行が、減速していくだろうか?
冒頭に書いたように、日本政府はもう、実質的なコロナウイルスの封じ込めは諦めているのだ。
感染者は非感染者の中に身を隠し、症状が進んでいよいよ具合が悪くなって初めて医療機関を受診するだろう。人工呼吸器やECMO、医療従事者は足りなくなり、感染予防の努力の不十分さに呪いの言葉を吐くだろう。
そして医療従事者に残された選択肢は、敵前逃亡するか、自ら感染して前線を去るかのどちらかになるだろう。
状況はかなり絶望的だ。この山梨の20代女性のニュースは、そのぐらいの深度のあるエピソードなのである。そのことを今、この国でいったい何人の人が気づいているだろうか?
上のKida氏のSNSの投稿をシェアしたところ、別の友人から…「記事の目的は、政権批判と透けて見えるので、今回の事例を都合よくネタにしているだけと感じます。大石さんは、誘導されていると感じています」という予想だにしないご指摘を受けました。
私が、自分の出自や今の私の立場、党籍…すべてを熟慮した上で、あえて時に権力者に厳しい論評を載せるのは…「政権批判が目的」だからではありません。だったらとっくに、もっと違った形の行動で動き回っています。どんな党のどんな政権でも、ダメな時はダメと思いますし、間違った時には反省し、撤回し、修正し、それでもできなければしっかり責任を取っていただきたいと願っています。。私は「このままでは、日本が故郷が崩壊してしまう!」。そんな危機感から、国ではなく一般の国民、自分の周囲の市民のみなさんに、団結と改善を訴えているだけです。
黙っていては何も変わりません。日本は全体主義国家ではありません。権力者は、耳の痛い話でも謙虚に受け止め、よりよい社会を築く材料にすべきだと考えています。
私は毎日、国の支援策の一覧表など、政府や県が頑張っている上の写真のような有益な情報もお伝えしていますよね?