
リニア中央新幹線の南アルプストンネル工事の着工時期と、それに伴う大井川流域の水と自然環境問題について、静岡県の川勝知事とJR東海の金子社長との初のトップ会談が本日26日、県庁の知事室で行われました。
JRが固執する「2027年開業」のためには…「今月中の※準備工事の着工が不可欠だ」とする金子社長は「(本体工事の)トンネルは掘りません。工事の責任者は私です。私が知事に『掘らない』と知お約束する」「なし崩し的に掘ることはしません」「まずは準備工事を始めたい。知事のご了解、ご理解をいただければ、いろいろなことが前に進むのです」と…あの手この手で、川勝知事にお願いを続けたわけですが…
トップ会談を前に、JRが求める今月中の着工は認めない方針を示していた川勝知事は、最後まで明確な返答をせず、話し合いは物別れに終わりました。川勝知事は、これまで通り準備工事は「国の有識者会議の結論が出るまでは認めない」「県と事業者が『自然環境保全協定』を結ばなければ、5ヘクタール以上の開発は認めない」という方針を改めて強調したことで…2027年の開業は、これで事実上不可能となりました。
川勝知事と金子社長が、が直接会うのは今回が初めてでした。JR東海が目指す2027年のリニア新幹線開業を左右するという注目度の高さを表して県内外からマスコミ30社が集結。その一部始終は、県のホームページやYouTubeチャンネルでライブ配信されたので、私も最初から最後まで約90分、自室で視聴させていただきました。
和やかな雰囲気で始まった会談の序盤戦で、川勝知事が、金子社長に「さあどうか、この大井川の水で育まれた牧之原台地のお茶をお飲みください。今年、宮中に献上された最高のお茶です。牧之原の水は、みな大井川から得ている。このお茶はその農業芸術品。私は、牧之原市長から『これは牧之原台地の農家の心の結晶です』と託されました」と言い放ったのには驚きました。
このシーンはNHKの19時の全国ニュースでも字幕付きで取り上げられたことで…われわれ地域住民や静岡県民がどれほど大井川の水資源と環境保全に真剣に取り組み、調査も対策も補償も未定のまま、見切り発車的なトンネル工事開始に不安と不信感を抱いているかということが、かなり伝わったのではないか? とうれしく思いました。
<牧之原市の杉本基久雄市長の話>「トップ会談が、全面公開の場で行われたことは、流域住民、静岡県民にとって、情報共有の観点で大変有意義であったと思います。
全国のみなさんに、静岡県をはじめ流域市町の命の水の大切さや自然環境問題が、ご理解いただけたと思います。
一方、JR東海金子社長は、2027 年開業ありきで時間がないことを前面に出し、水および自然環境等に対する具体的な対応策の説明はなく、流域市町の安心や信頼を担保する説明はありませんでした。
知事には、牧之原の〝心の結晶〟である日本一の牧之原茶、皇室献上茶を金子社長に呈茶し、流域住民60万人の「命の水」をご説明くださった感謝しています」
※準備工事 ①土砂をためる場所や機材置き場の整地や水処理施設の設置 ②本体工事につながる地下への穴の入口付近の樹木伐採や整地

夕方の民放のローカルニュースでは、牧之原市を代表するトマト生産者の山本義明さんも登場し、大井川から水の恵みのありがたさを力説されていました。