踊る会議の表と裏
〝発言録〟と〝議事録概要〟を見比べて、検証してみました!(^^)/
今朝の静岡新聞に…『国会議結論に従う」記載なし 7月22日の自民特別委、静岡県知事が発言録公表』という興味深い記事が出ていました。
川勝知事が昨日の定例会見で、リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、22日に非公開で開かれた自民党の超電導リニア鉄道に関する特別委員会(古屋圭司委員長)での自身の発言録を公表した上で…
同日の委員会後に自民党の古屋委員長が、記者団に「川勝知事は(国交省専門家会議の)結論が出たら従っていきたいと初めて公の場で発言した」と説明したことで…「静岡県知事が譲歩の姿勢も?」という全国ニュースになったことに対し…
「流域住民が理解、安心できる資料を作成し、JR東海が説明できるように指導するのが、国交省専門家会議の目的」「会議の結論に従うのはJRの方です」との認識を強調。。古屋発言を事実上否定したそうです。
ふー! やれやれ…。自身が聴いて受け取ったという内容を、一方的に東京のマスコミに吹聴した古屋委員長と、県の職員が作成した自身の〝発言録〟を客観的資料であるかのように県庁詰めのマスコミに配布した川勝知事…。どちらのやり方も手前味噌になりがちで、公正感に欠けると思います。
なので、自民党党本部の事務局が作成した当日の「議事録(概要)」と昨日知事が配布した「静岡県知事発言録」の両方を取り寄せて、読み比べてみました。
超電導リニア鉄道に関する特別委員会議事録(概要)
By 自由民主党
令和2年7月22日11時30分より、党本部7階701号室
〇開会・進行 事務局長 丹羽秀樹
〇挨拶 委員長 古屋圭司
〇議事 「リニア中央新幹線の整備についての意見交換」
愛知県 大村 秀章知事(リニア中央新幹線建設促進期成同盟会会長)
岐阜県 古田 肇知事
長野県 阿部 守一知事
静岡県 川勝 平太知事
山梨県 長崎幸太郎知事
神奈川県 黒岩 祐治知事
東京都 武市 敬副知事
〇質疑等
冒頭、古屋委員長より、「日頃よりリニア新幹線に対し、ご理解を賜り感謝申し上げる。本日は、リモートも含め、沿線の9都府県の知事、副知事にお集まりいただいた。率直な意見交換を行っていきたいと思う。なお、今後、JR東海からのヒアリング、また現地視察を行うなど、しっかりと地元の意見をくみ上げ、納得して工事が推進するように取り組んでいきたい」旨の発言があった。
・国土交通省水島官房長、上原鉄道局長挨拶
(知事発言)
大村知事(愛知):本日は、お呼びいただき、感謝申し上げる。リニア推進期成同盟会の会長として、冒頭発言させていただく。すでに愛知県においては、名古屋駅の整備を進め、用地買収も7年で9割確保した。コロナ後の時代においても、リニア新幹線の必要性は変わらない。同盟会としてぜひとも2027年のリニア新幹線早期開通に向けてご尽力いただきたい。
静岡工区については、国交省の有識者会議にて、科学的根拠、客観的証拠をしっかり出して、もらいたいと思う。今の技術で環境は守れると考えている。トンネル本体工事と連動しないと聞いているので、静岡の皆さんに対し、水資源に対する課題解決をしっかり対応し、ぜひとも2027年度の開業に向けて、着工を始めてもらいたいと考える。
古田知事(岐阜):リニア新幹線が開通すれば、品川まで30分ということで、東美濃地区の観光誘致などを進めている。4月に陥没事故があったが、JR東海としっかり連携することで対応できた。今後は、専門家の客観的な結論に基づき、地元の納得を丁寧に得ながら、ぜひ速やかに取り組みを進めてもらいたい。
阿部知事(長野=リモート):長野では、官民挙げてリニア開通に向け、取組を進めている。2027年開通に向けて、ぜひとも取り組んでいただきたい。
川勝知事(静岡=リモート):お呼びいただき、感謝申し上げる。また近々、視察に来ていただけるということで、重ねて感謝申し上げる。私は、リニアについて大推進論者である。橋本内閣の審議会にて「21世紀の国土形成モデル」にリニアを位置づけたり、小渕内閣でも「中国に技術が盗まれることのないよう、日本のシンボルとする」よう進言した。トンネル工事で発生する残土置き場についても提示してきた。
リニア新幹線が開通すれば、東海道新幹線のひかり、こだま増発につながり、県民も期待している。
静岡の62万人が大井川の水を飲んでいる。さらに産業用水、農業用水にも利用されている。大井川は、平成30年に140日以上の節水をお願いした。地下水が不足した企業は440社、井戸も枯渇した経験があり、大井川の水は1滴たりとも譲ることはできない。
JR東海に2013年に、水を戻してもらう要望書を提出したが、4年半経った2018年にようやく返信があった。学者の方々が地質調査したくても、JR東海がずっとデータを出さずにいた。
国交省で専門家会議を行っていただいてありがたいが、静岡の水は1滴も譲れない。この思いはぜひ受け止めて、ご理解いただきたい。JR東海が正確な科学的データを提示すれば、おのずと答えは出ると思う。
また、この間の豪雨災害で、林道がズタズタになってしまった現状もある。いずれにしても、科学的見地から結論が出れば、反対しない。また、リニア建設推進期成同盟にぜひ加入させていただきたい。
長崎知事(山梨):山梨には空港や新幹線がなく、リニア新幹線開通は、大変大きな転換点なると考えている。平成2年の実験線から始まり、工事等も順調に進んでいる。逆に開通が遅れると、影響が非常に大きいと考えている。
静岡については、水資源は当然地元の方々は心配されることで、しっかりとその回答を出すことが重要だと考える。科学的な調査、分析による合理的な解決を出してほしい。静岡については、必要ならば補償してあげることも検討すべきだと思う。
黒岩知事(神奈川):2027年開通に合わせて動いている。橋本駅のまちづくりも進めており、高校まで移転していただいた。神奈川でも「井戸が枯れる」との報道が今日あり、懸念もあるが、JR東海とも連携しながら、しっかり取り組みを進めたいと思う。
武市副知事(東京):リニアの開通で、東京のまちも劇的に改善されると考えており、品川周辺や羽田アクセスなど、必要な取り組みをしっかりと進めていく。
(質疑応答)
赤池参院議員(比例区※山梨出身):川勝知事に伺う。国の有識者会議が結論を出した際には、しっかり受け止め、地元に説明してくれるか確認したい。もう1つは、山梨にある田代ダムには大井川の水が流れてきており、有識者会議の結論で、工事により大井川の水が減るならば、田代ダムの利活用できる水を大井川に戻すことで理解していただけるのか?
川勝知事:静岡の専門部会にも有識者がおられ、JRと議論してきたが、JRからデータをもらえなかった。有識者は、そうそうたる方々なので、結論は最も尊重すべきものだと考える。地域の皆さんへの説明は、静岡の)専門部会では100%公開しており、有識者の結論は100%尊重するが、どう説明するかは考えていかなければならない。
田代ダムについては取り決めがあり、また問題は水量だけでなく、生態系への影響などもあるので、流量だけ取りもどすだけでは解決しないと考える。
赤池議員:静岡の有識者会議の意見は100%尊重するとおっしゃったが、国有識者会議の結論は100%尊重していただけるのか?
川勝知事:国の有識者会議にも静岡の代表が2人入っており、47項目の問題を提示させていただいている。国の有識者会議の結論を地元が納得してくれればよいと思う。
古屋委員長:林道がズタズタとの話があったが、現状どうなっているか、国交省から説明願いたい。
国交省:林道については、静岡市が管理しており、早期復旧を目指している。すでにかなりの部分が復旧されている。
片山さつき参院議員(比例区):リニア建設推進期成同盟に川勝知事が入るということで、本当によかった。水環境、生態系について、安堵できればよいのか?
川勝知事:前から入れてほしいと言っていた。安堵するために、どういう根拠を示してくれるかが大事で、水問題が解決すれば、大団円になると思う。
大村知事:期成同盟の参加は、リニア建設を推進する意義に賛同する方々にお入りいただくものだと承知している。
井林衆院議員(静岡2区):知事の考えに対しては、今の技術で対応可能だと思う。また環境アクセスには常に最新の技術で対応すると明記されているので、引き続き最新技術での対応を要望したい。また、水の問題については、補償ではなく、まず保全措置をどのようにするかを検討すべきであり。JR東海には頑張っていただきたいと思う。
森屋参院議員(山梨選挙区):山梨では、リニア解説に向け、30年取組を進めてきている。静岡の問題も聞いたが、本事業は国を挙げての対応が期待されており、しっかり国としての責任を果たしていく必要がある。地域の声をしっかり聴くよう委員長にお願いしたい。
岩井参院議員(静岡選挙区):国を前面に出し過ぎて、地元静岡の気持ちをないがしろにされては困る。客観的事実と科学的な積み上げを重ねていく必要がある。斜坑については、JRの技術で可能なのか不安視する声が一部にある。林道に関しては、写真で見る限りでは、土木技術的に問題なく対応できると思う。
国交省:岐阜の件は、ボーリング調査で判明しなかったもろい地質があったためと認識している。トンネル工事については、何重にも調査しながら行う必要があり、難しい地質であることは認識しているので、よくよく注意しながら工事を進めていく。またご指摘の林道整備については、技術的な問題はないと思っている。さらに補償については、国交大臣意見で出されているように、補償ありきでは進まないので、まずは保全をどうするかをしっかり検討してまいりたい。
長崎知事:山梨でも、井戸は34件枯渇している事例があり、JRに対応してもらったことを報告しておく。
古屋委員長:今回は大勢の知事にお集まりいただき、あらためて感謝申し上げる。公共事業は、地域の理解がなければ進まない。関係者は、地元に対し丁寧に説明するようお願いしたい。多くの知事の方々から、2027年開通を望んでいるとの思いを聞かせていただいた。川勝知事も大推進論者で、専門家会議には従うと言われた。国交省においては、専門家会議をどんどん進めて、静岡の意見も聞きながら、科学的な結論を出していただきたいと思う。
以上。
総じて、発言した静岡&山梨の国会議員以外の各知事・副知事は…「自分の地域の発展にはリニアの早期開通が欠かせない」という単純な思いしか抱いていないことがよくわかりました。
各人の発言で、私が重要だと思った箇所、事実誤認や我田引水が過ぎると判断した部分は、下線を引いたり、太字にしました。
自民党の事務局が作成したこの議事録によって…川勝知事は、確かに「有識者会議の意見は100%尊重する」とは言っていますが。山梨の議員の質問には「国の有識者会議の結論を地元が納得してくれればよいと思う」と答えていて、この文脈では「静岡県民が納得するわけないでしょう?」という真意が透けて見える気がします。
それでは、今度は静岡県の職員が、テープ起こしして作成したと思われる知事が配布した〝発言録〟を見てみましょう。。
7/22 超電導リニア鉄道に関する特別委員会(自由民主党) 静岡県知事発言
By 静岡県
1 日時 令和2年7月22日(水) 11:30~12:50
2 場所 静岡県庁東館5階特別会議室(Web参加)
3 出席者 静岡県 川勝知事
4 会議の概要
・自由民主党が、超電導リニア鉄道に関する特別委員会を開催し、関係する都県からリニア中央新幹線の整備に関する意見を聞いた。
・初めに、リニア中央新幹線建設促進期成同盟会の会長である愛知県、続いて岐阜県、長野県、静岡県、山梨県、神奈川県、東京都の順で、各都県状況等について、それぞれ5分程度、説明を行った。
・その後、出席議員との意見交換を行った。
5 発言内容
(静岡県知事)
近々、先生方が現場に身に来られることは、大歓迎したいと思う。リニアについては、私は大推進論者である。何か私の言動が、あるいは静岡県が、リニアの足を引っ張っているかのごとき風評が出ていることを大変憂慮している。
私自身の経緯を申し上げると、橋本内閣の時から国土審議会の委員を20年近く務めてきた。したがって、21世紀の国土のグランドデザインも、また国土形成計画におけるスーパーメガリージョン、すなわちリニアの建設についても、その策定にあたった1人である。
さらにJR東海の広報部ウエッジの研究会も20年近く副座長を務めてきており、そのようなご厚意もあり、小渕内閣の時には、大月ー甲府の間で実験線にも乗せていただいた。さらに当時は、中国の朱鎔基さんがお越しになり、これが欲しいと言われているという噂があったため、現場の方々の声を聞き、当時経済企画庁長官であった堺屋太一先生に「これは日本にとって重大な、技術的なシンボルであるから、絶対に中国に譲るようなことがないように、小渕先生にお伝えください」と言った経緯もあった。
そして2011年、ルートが決まった。その時、一番最初に現場に入ったのは、おそらく誰よりも早く、私である。この連休の時には、南アルプスの現場に参って、二軒小屋からさらに500m上がった転付峠のところからそのルートを見て、さらにトンネルから相当な残土が出るということで、もう1度秋に訪れて、残土置き場を提示したのが、この私である。
私自身は、まさかリニアが静岡県を通るとは、その直前まで知らなかったという経緯がある。知事になるまでは、東京から神奈川、山梨、長野、岐阜、愛知を経て、三重、奈良、大阪に至るというふうに思っていた。しかし、ありがたいことに静岡県を通るということで、歓迎をしたものである。しかも、リニアが通ると、のぞみ機能がリニアに代わるので、ひかりとこだまの本数が多くなって、現状ひかりとこだましか止まらない静岡県ではベネフィットが多いということを県民に説明していたほどである。
そういう中で、環境大臣意見あるいは国交大臣意見が出て「地元の理解を得るように」ということで、私自身も知事意見を出さねばならなかった。そうして分かったことがある。それは、静岡県の62万人の水道が大井川に(依存している)。それから、産業用水、工業用水、農業用水などがすべて、平成19年から29年にかけて600億円近くをかけて牧之原台地に灌漑ができたということ。
…と、ここまで書き写しているうちに突然、私の気力も体力も尽きました!!(*´Д`)
川勝知事の熱い思い、理解を得ようとする意気込みはよくわかりました。。。。でも、長い!! あまりにも長すぎる!! どんなに過去の思い出や美辞麗句を並べて、滔々と持論を展開しても…焦点がボケてしまっては、反感を持っている相手には伝わらないどころか、逆にイラつかせるだけだと思いました。
残りの発言の記載は…配下資料の写真で代用しますね!(笑)