改めてリニア問題を考える
本日は『静岡県中央新幹線環境保全連絡会議 地質構造・水資源専門部会』を傍聴しました。同じ県庁内で行われた会議でしたが…またしてもリモートでの傍聴でした。
上のプリントの写真に書いてある通り、今月7日の国(=国土交通省)による『第8回リニア中央新幹線静岡工区有識者会議』でのJR東海の主張や座長コメントに集約された有識者会議の委員の方々の意見や考え方を静岡県の立場から確認し、考察し、今後の有識者会議等でのさらなる議論の進展のための〝提案〟につなげる会議でした。
冒頭で難波副知事が読み上げた県の掲げる大きな論点は…
【論点1】トンネル掘削による大井川の水循環と生物多様性への影響
①トンネル湧水の全量を大井川に戻すときの大井川の河川流量への影響
上流域 ⇒ 南アルプスの自然(生物多様性)への影響
中下流域 ⇒ 水利用への影響
②トンネル湧水の全量を大井川に戻すときの地下水への影響
上流域 ⇒ 南アルプスの自然(生物多様性)への影響
中下流域 ⇒ 水利用への影響
③工事中の一時期、山梨県側にトンネル湧水が流出した場合の影響
上流域 ⇒ トンネル湧水量が多いときは、上記の①②以上に大きな影響
中下流域 ⇒ 大井川の河川流量・地下水への影響 ⇒ 水利用への影響
【論点2】トンネル湧水の大井川への全量の戻し方
④全量を戻す方法の実行可能性 ⇒ 広報の適切性、リスク管理
⑤全量を戻した時の水質等への影響 ⇒ 生物等への影響
…の5項目で、それぞれ有識者会議でのJR東海の主張や会議での話し合いの内容について、県が考える課題や問題点を資料や観測&予測データを基に、こと細かく列記し、出席者全員で詳しく検証し、誤りを指摘し、ほとんどの部分を批判しながら進められました。
文系の私には、詳しく理解するのはとても大変なのですが…複雑な数式や地質学や土木学の知識や常識によって導きだされたJRの主張や計算結果に対する数々の疑問や懸念の概略は認識することはできました。
その一部始終を書き連ねることは、今から徹夜をすれば可能ですが(笑)…その超長文リポートが、一般の県民、市民のみなさまの興味をそそるか? 必要としている情報か? とは思えません。
以前も書きましたが、われわれ大井川流域の住民をはじめとするほとんどの静岡県民にとって、リニア新幹線問題で知りたいことは…JRのトンネル工事によって、新たに①大切な水は減りはしないか? ②ちゃんと戻すとい確約してくれるのか? ③少しでも減ったら未来永劫補償してくれるのか? ④希少な生物が絶滅したりしないか? の4点に対する説明だけだと思うからです。
もちろん、本日のような専門家による微に入り細を穿つ検証や検討は必要です。しかし、私のような政治家の仕事は、使命は、そういう専門家の方々の御高説を伺って、勉強して理解すれば終わり…ではありません。。私は本日、いつにもまして、リモート傍聴室を含む会場全体に漂っていた「だから、JRはダメなんだよ」「これじゃリニア工事着工なんかとても無理」という厳しくも否定的な空気が、とても気になりました。
前回も書いたように、大井川は長年の発電や治水のためのダム建設で、今でも慢性的な水不足が発生しています。もう何十年も前から、河床の水枯れによって生態系の危機に直面している川です。「だからこそ、静岡県には直接的なメリットのないリニア工事には、厳しく目を光らせ、事前に徹底的な調査とリスク管理を求めているんだ」というのが、今の県の基本方針です。。では、工事着工前の今も現在進行形で起こっている過去の大工事に起因する諸問題の方は、そのままでもよいのでしょうか?
繰り返しますが…静岡県が、リニア工事で発生しうるあらゆる問題点を予測して、JRや国交省にリスク管理の必要性を提案することは大賛成です。ただ、現状の問題の解決策を置き去りにしたままで、一方的にJRだけに厳しく、細かく調査や対策を要求していくやり方では、この先も他の都府県や国民全体の理解を得るのは、非常に難しいと考えます。
もちろん、コロナ禍によって急速に変わった生活様式の変化や、今後の高速鉄道の需要の激減予測を受けて、この先「もう、リニアなんか要らない!」という立場に立つというのであれば、話は別です。〝そもそも論〟でリニア建設反対を訴えている県民、国民も大勢います。
しかし、静岡県の立場は違うはずです。川勝知事は、私の12月議会での一般質問への答弁で「リニア建設そのものは反対してません! (静岡県を回避する)ルート変更ありきでもなく、JR東海には大井川の水資源と南アルプスの自然環境に悪影響を及ぼさないように万全の対策を講じてもらわなければいけない」と言い切りました。
では、まず隗より始めていただきたい。