第9回リニア有識者会議
国土交通省で開催されている『第9回リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議』を、静岡県庁でリモート傍聴しました。今月7日の第8回会議に続く、日曜日開催でしたが…リニア問題を所管する県議会危機管理くらし環境委員会の委員としては、絶対に聞き逃せない重要な会議でした。
22日に静岡県が、県の中央新幹線対策本部長である難波副知事名で、国交省の上原鉄道局長宛に提出した『有識者会議での今後の議論に対する提案について』という文書の内容が、どのように反映されるかも、注目されていましたが…この文書について、会議の中で話し合われることはありませんでした。。さらに、前回の会議後に、川勝知事が声高に〝廃止〟を要求した同会議の福岡捷二座長(中央大学研究開発機構教授)による『座長コメント』も、これまで通り発表されました。
休憩なしで3時間に及んだ会議は、これまでに比べ比較にならないほど丁寧で分かりやすい説明が行われ、各委員の理解と共通認識が深まったように感じました。静岡県と一部の委員からの指摘を受け、JR東海は国交省や各種機関から収集した降水量や河川や地下水の流量などのデータを大井川の水循環等の概念図を修正の上、再提出しました。
降水量や蒸発散する水の想定量は別として、ドンネル工事で湧出する地下水の量等は、静岡県は従来から「JRの入力データや算出式から導かれた想定量は非常に少なく、楽観的で信じられない」という立場ですが、JRが自社モデルだけでなく、より厳しい静岡市モデルの数値を使って再計算している以上、これをさらに否定するとなれば、やはり静岡県も独自に実地調査等で、自ら進んでデータを収集して〝静岡県モデル〟の数値を出してから、JRに再計算させなければ「この論争は水掛け論となって、いつまでたっても終わることがないだろう」と思いました。
これ以上の私個人の考えと意見は、3月8日(月)の委員会の集中調査で述べさせていただきますが、今日のところは、会議内容を総括している『座長コメント』を掲載します。
【第9回リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議 座長コメント】
1.本日の主な議論事項
(1)トンネル掘削工法とリスクへの対応について
〇トンネル湧水を大井川に戻すにあたり、想定されるトンネル湧水量や突発湧水等が不確実性を伴うことから、地盤状況の差異、気象や災害、設備故障等のリスク要因と、水量や水質に対するリスク対策の考え方について議論した。
〇このうち山梨県境付近の断層帯のトンネル掘削については、JR東海により複数の広報について施工上の安全性等の観点からの評価が行われ、事業主体としては静岡県側からの掘削は難しいことが示された。
〇一方、これに伴う工事期間中のトンネル湧水の県外流出については…
・静岡県側の坑内からの高速長尺先進ボーリングでの揚水等による流出量の軽減策
・流出量の全量を大井川に戻す代替措置として、先進坑貫通後に県外流出量と同量の山梨県内のトンネル湧水量を時間をかけて静岡県に戻す方策
…が提示され、選択肢としてあり得ることを有識者会議として確認した。
※これらの方策の実施に関しては、今後、JR東海が静岡県や流域市町等との間で協議されるものと考える。
(2)水循環の概念図について
〇JR東海から、トンネル掘削完了時及び掘削完了後の恒常時の概念図が、水循環量と合わせて提示された。今後、さらなる修正を加えつつ、利水者等に対して丁寧に説明をしていくことをJR東海に対して指示した。
(3)工事期間中における山梨県側へのトンネル湧水流出量の評価等について
〇年変動の影響等を踏まえたん河川流量の試算結果が示された。この結果は、前回会議で平均的にとして示された両モデルによる予測結果と同様の傾向になっていることを有識者会議として確認した。
〇なお、このような傾向が確認されるのは、静岡工区内に発生するトンネル湧水によって、河川流量の減少が補われていることに留意が必要である。
2.次回以降の議論事項
(1)リスク対策の考え方等については、リスク評価の指標等について、本日の会議での指摘を踏まえ、さらなる適正化を図り、次回会議で示すようJR東海に対して指示した。
(2)また、前回の座長コメントにおいて、これまでの有識者会議で議論してきた事項を総括した上で、利水者等に対してわかりやすい説明になるようにとの指示を受け、本日事務局より提示された「リニア中央新幹線静岡工区有識者会議におけるこれまでの議論について(素案)」は、本日の議論や各委員からの指摘を踏まえて適宜更新し、次回改めて提示するよう事務局に指示した。
(3)なお、今後、取りまとめるにあたっては、静岡県からの提案書の指摘も念頭に置きつつ、引き続き、科学的・工学的な観点から整理する。