知事辞職請願と勧告決議可決
川勝平太知事のいわゆる「コシヒカリ発言」を巡り、静岡県議会は本日24日の11月臨時議会において、野崎正蔵、佐地茂人、木内満(以上自民改革会議)、蓮池章平(公明)の4県議が連名で提出した『川勝平太知事に対する辞職勧告決議案』を47対19の賛成多数で可決しました。
最大会派の自民改革会議(39人=宮沢議長を除く)と第3会派の公明党県議団(5人)、そして志太榛原の無所属議員3人(大石健、桜井、諸田)が賛成しましたが、知事与党の第2会派ふじのくに県民クラブ(17人)と共産党(1人)と浜松市の無所属議員1人が反対でした。
知事に対する辞職勧告決議案が提出されたこと自体が、静岡県政史上初ですが…辞職勧告決議には法的拘束力がなく、川勝知事は閉会後に辞職を否定。「極めて深刻に受け止めています。これから年末にかけて猛省の期間にしたいと思います。これから議会もありますが区切りをつけて、来年は生まれ変わったような気持ちで仕事をします。富士山に誓いました」と話した上で、12月の報酬とボーナスの受け取りを辞退する意向を示しました。
採決に先立ち、4名の議員が「賛成」「反対」のそれぞれの立場で2名ずつ討論を行いました。その中で、一番私の考えに近かった、公明党県議団の蓮池章平代表の熱弁をご紹介します。ちなみに、公明党は6月の知事選では「自主投票」という立場を貫き、川勝知事、そして自民党が推薦した岩井候補のどちらの陣営にも与していませんでした。
【賛成討論~蓮池章平(公明党県議団)】
私は、ただいま上程されました川勝知事に対する辞職勧告決議案に対して、賛成の立場からその理由と意見と述べたいと思います。
川勝知事は本年6月20日、知事選において4回目の当選を果たされました。当時、新型コロナウイルス感染症の新規感染者は第4波のピークを越えたものの、変異株デルタ株の発生と増加に、一刻の油断もできない状況にありました。
県民は、新型コロナウイルス感染症対策ならびにコロナで傷んだ県内経済の再生、ワクチン接種の推進、医療提供体制の充実等、喫緊の課題のみならず、人口減少対策、防災・減災対策等、本県の置かれている様々な課題にしっかりとリーダーシップを発揮して県政を進めることを期待して(川勝知事に)付託したのであります。
その後、本県は長雨の影響で、7月3日に熱海では土石流災害が発生。沼津市の黄瀬川大橋の橋脚崩落、浸水被害等、自然災害で追い打ちを掛けられるような状況に追い込まれました。
そのような状況の中、10月7日に参議院補欠選挙が告示され、知事は「県民党の党首」と自称され、自発的に幹事長の山崎真之輔候補の応援のマイクを握られました。私は、今回問題となっている応援演説の発言も、この時の知事の判断の誤りから端を発していると思います。
県民の付託を得て、静岡県の代表として何をしなければならないのか? まずは、課題満載の県政運営を最優先に考えるなら、車の両輪である県議会への対応を考えるべきで、あえて議会と対立すような選択をした、大きな判断ミスがあったと思います。
自分の言動が、後にどのような事態を招くのか、想定できていなかったとすれば、県政運営にもっとも必要な、知事の危機管理能力に大きな疑問符を付けざるを得ません。今回の参院補選の応援演説が、知事にとってどれほど重要で、どのような意味を持つのでしょうか? 県政をしっかり運営していく以上に重要なことでしょうか? 私は未だに、理解ができません。
川勝知事の心情は推察できます。おそらく山崎君が可愛かったのでしょう。しかし、県知事として自らが置かれている状況を冷静に判断し、戦った相手をも味方にし、県政の重要政策を進めるべく努力すべきところを、理性を失い、感情を優先して、「弟分」を称した山崎君を応援したことで、県政のトップに求められる大局観に立てなかったことは、大問題であります。
360万県民の命と暮らしを守るべき責務を負った知事は、応援演説のマイクを握りながら、土石流災害で家族を失い、家を失った熱海のみなさまのことを、コロナに罹患し、入院し、苦しんでいる人のことを考えたのでしょうか?
コロナウイルス感染症と闘う医療現場で奮闘するみなさまに、明日の生活に大きな不安を抱えながら必死の思いで踏ん張っている観光関連事業者、中小企業で働く人々に…そして、心に大きな傷を負って学校に通えない子どもたちに、心を寄せましたか?
山崎君が「国政に挑戦する」と言ってきた時には「私は、県政に専念するので、君は精いっぱい自分で頑張れ!」と励ますのが、県政のトップである知事の本来あるべき姿ではありませんか? 先の混乱を想定せずに、理性を失い、自らの感情を優先し、行った今回の言動は、県民に対する背信行為です。
10月23日の選挙戦最終の演説で、知事は「東の玄関口、人口は8万強しかないところ、その市長をやっていた人物か、この80万都市、遠州の中心・浜松が生んだ私の弟分、どちらを選びますか?」「こちらは、職愛の数も430のうち3分の2以上がある。あちらはコシヒカリしかない。ただ飯だけ食って、それで農業だと思っている」「浜松、遠州、その中心はここ。経済はここが引っ張ってきた。あちらは観光しかありません」と絶叫されました。
一昨日の報道では、最終の演説の前にも同じ浜松市内で「静岡県の東の玄関口の門番、(御殿場市には)8万ちょっとしかいない。ここは80万いるわけですよ。経済はこちらが動かしている。向こうはコシヒカリしかないじゃないですか」と絶叫され、そこにいた聴衆は「そうだー!」「そうだー!」と歓声を挙げていました。
知事、この時はどんなお気持ちだったのでしょうか? アドレナリン全開で、気持ちよさそうな顔をされていましたが、御殿場市民、ならびに御殿場市に対する侮辱的な発言で、どれだけの人の心を傷つけたのでしょう? 県の代表である知事の発言は品位を欠き、県民の分断を煽る発言であり、どのように説明されようとも、許されることではありません。
コロナですべての県民が大変な思いをしている今「誰1人として取り残さない」というのであれば、全県民が力を合わせてこの難局を乗りこえるための努力を最優先とするのが、知事の役目であります。
この問題が表面化して大きくなると…「すべては誤解である」と抗弁されました。今でも知事は、そう思っているのではありませんか? さらには「自分の意図していることとは、真逆である。自分はそう思っていない」とも言われました。
しかし、「意図していない」「思っていない」ことを発言されているのであれば、今後は知事の発言されることには、すべて疑問符を付けざるを得ませんし、知事の発言は信用することができないことになりませんか?? 流暢に話をされる〝公人〟の川勝平太と、絶叫して聴衆を煽る〝私人〟の川勝平太のどちらの言葉を信用すればよいのでしょうか?
ちなみに、御殿場市のワクチン接種率の低さを批判し、新しく選ばれた勝又市長に川勝知事が強く言ったので「ワクチン接種率が上がった」とも言われましたが、調べてみると…もともと御殿場市の報告の中に、自衛隊員と医療従事者の約11%が入っていなかったことがわかりました。また「県からは(接種率向上のための)アドバイスさえなかったのが残念」との声も聞こえてきます。
知事には、そういった情報が入らずに発言したのでしょうか? 相手候補を攻撃する材料にする前に、御殿場市民のことを心配して「なぜ低いのか?」「県が応援できることはないのか?」。そう腐心するのが、知事の役目ではありませんか?
知事はよく「強い者に立ち向かい、弱い者を助ける」とおっしゃいます。しかし、知事自らが強大な権力を持っていることを自覚されているのでしょうか? 「権力には魔物が棲む」とも言われます。知らず知らずのうちに魔物に食い破られ、自分の言うことすべてが正しく、人の諫言など一切耳に入らなくなることがあります。今の川勝知事は、そうなってはいませんか?
なぜ、このように知事に厳しく対応しているか、理解されておりますか? 今回の問題発覚から釈明会見、「誤解だ」発言、謝罪への一連の知事の行動を行動を見るにつけ、問題の本質がまったく判っていないのです。
知事選の終了後に「これでノーサイドというわけにはいかない」と発言されましたね? 絶対的な権力者である知事が、個人的な恨みつらみを県政に持ち込んでいるのです。これは、絶対にやってはならないことなのです。それが分かっていないから、今回のような混乱を招いたのです。
県政運営にもっとも重要な危機管理能力の欠如、発する言葉の信頼失墜、冷静で品位を保つべき知事が、県のトップとして、代表として、決して口にしてはならない県民を分断する、極めて不適切な…御殿場市、御殿場市民、ひいては県民に対する侮辱的な発言を許すことはできません。
以上、述べました理由により、川勝知事に対する辞職勧告決議案に賛成するものとします。良識を持つすべての議員の賛同を望むとともに、川勝知事には是非とも潔く身を引かれることを強く望み、私の討論としたします。
今回の臨時議会の開催事由だった御殿場市民から提出された『川勝平太知事の辞職を求める請願』も、午前中に賛成多数で可決されました。
高校時代はラグビー部で活躍し、花園にも出場した正義感あふれるお酒屋さんの真摯な思いは、県議会には伝わりました。「One for all, All for one」のラクビー精神は、政治家にこそ求められると私は思います。